CBDとスポーツ
激しい運動は、スポーツ選手の健康にさまざまな面で影響することがわかっています。スポーツ選手が選手権で優勝する代償は、心理的なもの(不安感)であったり、習慣性のもの(睡眠パターン)であったり、肉体的なもの(怪我、骨の病気、神経損傷、筋肉痛、消化器疾患、感染症など)であったりします。CBDはこうした問題をすべて解決できる万能薬ではありませんが、CBDが身体の恒常性(ホメオスタシス)を維持する仕組みは、運動がもたらす悪影響の一部を緩和させるのに役立ちます。
CBDと骨
運動中に怪我をするのはよくあることです。一般に、運動は骨を健康に保つためには有益ですが、スポーツ選手は同時に、怪我をしやすく、エネルギーが枯渇することもたびたびあります。それによって骨の総合的な健康が損なわれ、神経損傷の原因ともなります。人間の骨に対するCBDの作用は未だ研究が行われていませんが、エンドカンナビノイド・システムの役割はある程度は研究されています。骨に発現しているカンナビノイド受容体CB1とCB2には、骨の恒常性を保つ役割があります[6]。動物に関する内因性カンナビノイドの研究では、CBDが骨折治癒を促進し、骨量の減少を防ぎ、骨折後に形成される仮骨を最小に保つ可能性があることを示しています。
スポーツによる末梢神経損傷は稀で、普通は怪我が原因です[7]。スポーツしているときの末梢神経の損傷は、圧力、ストレッチ、骨折などが原因で起こります。JA Prenderville et al(2015年)のレビュー論文[9]によれば、「実際にカンナビノイドは、成人の脳で起こるニューロン新生に関して、おそらくはCB1受容体とCB2受容体の活性化を通して明確な調節的役割を担って」います。1960年代までは、成人の脳には自己再生の能力がないものと広く考えられていましたが、この考え方は1965年、Altman と Das [10]の論文によって反証されました。その後、成人におけるニューロン新生の仕組みに関する理解には大きな進展が見られたものの、その過程はまだ完全には解明されておらず、仮説によれば、内因性カンナビノイドはニューロン新生のある段階で重要な役割を果たしている可能性があります[9]。またエンドカンナビノイド・システムは、海馬におけるニューロン新生に中心的な役割を果たすことがわかっています。
CBDと筋肉
エクササイズはまた、骨格筋に微細な損傷を与えることがあります。身体は損傷の起こった部位に自然に血液を送り込んで(炎症反応)、修復と再生を促進し、筋肉の痛みをやわらげます。CBDには抗炎症作用があることがわかっています[11]。炎症は筋肉の再生には欠かせません[4]が、筋肉痛を長引かせ、機能の回復を遅らせる原因にもなります。CBDの持つ抗炎症作用を歓迎するスポーツ選手の数は増えつつあり、彼らはCBD入りの軟膏、ローション、オイルなどの製品の効果を、疲労回復、疼痛緩和、炎症の軽減のために活用しています。
CBDと消化器系
筆者の個人的経験から言えば、CBDの作用の中でも最もわかりやすくまた即効性があるのは、吐き気と胃の痛みを抑える作用です[4]。持久力系のアスリートの30〜50%は、現役時代に何らかの消化器系の症状を経験しています[3]。吐き気、嘔吐、腹部アンギーナ、血便などを含むこうした症状は、通常は軽いもので、普段の栄養習慣、力学的な原因、水を飲むこと、内臓部から運動中の筋肉に向かって血液が流れることなどによって起こります。必ずしも選手のパフォーマンスに影響するわけではありませんが、スポーツ初心者や、これからジムに通ったりスポーツを始めようとしている人は、吐き気を感じればやる気を削がれますし、目標達成の邪魔になるかもしれません。
CBDの効果には2つの相があることがわかっています。高用量(一日あたり1,500ミリグラム以上)を摂取すると嘔吐を抑えることができます。ただし、英国食品基準局の忠告にしたがって一日70ミリグラムしか摂らなくても、吐き気や嘔吐を軽減させるのに効果があることが報告されています。CBDパッチは、長時間にわたって一定の量のCBDを放出します。CBDが持つ抗炎症作用・抗酸化作用と並んで、この摂取方法なら、激しい運動が引き起こす消化器系の症状から胃腸を護ることができるかもしれません。
CBDと疼痛
基礎研究で明らかになったCBDの効果の中でも最も有益なものの一つが、顕著な鎮痛作用[4]です。CBDが鎮痛作用を発揮するためにはおそらくいくつかの条件があって、治療量、痛みの種類、また摂取方法などが関係していることを理解するのが重要です。推奨最大使用量(英国食品基準局によれば一日あたり70ミリグラム)では、着実に痛みを緩和させることはできません。CBDに対する反応は選択的なもので、CBDが疼痛効果を発揮するのは、特定の抗がん剤による神経性の疼痛に対してのみであることを示すデータもあります。概して、動物モデルを使った実験では、CBDの外用薬を局所的に皮膚に塗布すると実際に鎮痛作用が認められます。
CBDと睡眠/精神面の健康
競技スポーツは通常、非常にストレスが高い環境の中で行われます。選手にどれほど才能があろうと、ストレスは、選手のパフォーマンスにも、また生活のあらゆる側面にも悪影響を与え、そこには睡眠も含まれています。眠りの質が悪ければ、人前で競技することに対する不安感が強まり、それが悪循環を引き起こします。CBDには、不安感をやわらげ、睡眠を改善する効果があることが示されています。
定期的なエクササイズは夜の安眠を助ける、と一般的に思われていますが、スポーツ選手は運動をしない人と比較して睡眠時間が平均1.2〜1.5時間短く、全体的に眠りの質も悪いという報告があります。一方、質の良い睡眠は、最大限の競技パフォーマンスを引き出し、疲労回復にかかる時間を最短にすることが証明されています。ある研究[12]では、不眠症の患者がCBDを使ったところ、睡眠時間もそのクオリティも改善されました。ですから、就寝前に温かい飲み物にCBDオイルを加えて飲めば、睡眠の質が改善される可能性があります。あるいは、競技前に不安を感じる選手は、競技の1時間前にCBDを摂ることで、不安症状をやわらげることができるかもしれません[8]。
CBD企業のアンバサダーになる著名スポーツ選手が増えています。CBDを使っているアスリートの中でも特に有名なのは、リッキー・ファウラー、エディ・ホール(別名ザ・ビースト)、マイク・タイソン、ミーガン・ラピノー、ジョージ・クルーズ、ネイト・ディアスなどでしょう。ランナー、武術家、パラリンピックの選手、スポーツ愛好家でCBDを愛用する人は増加の一途です。わたしたちは、まずはリサーチして、きちんと管理された信頼できる販売店、ブランド、製造企業の製品であることを確認してから購入するようお勧めします。
他に処方薬を摂っている人は、CBDを摂る前に必ず医師に相談しましょう。また妊娠中または授乳中の人はCBDを摂るのはやめましょう。
参照文献:
[1]. DOI: 10.1002/j.1552-4604.1981.tb02622.x (accessed 13/02/2021)
[2] Effects of sleep disturbance on functional and physiological outcomes in collegiate athletes: A scoping review – PubMed (nih.gov)
[3] https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/24791919/
[4] doi: 10.1186/s40798-020-00251-0
[5] doi: 10.1249/MSS.0b013e318265dd3d
[6] doi: 10.1007/s11914-020-00607-1
[7] doi: 10.20471/acc.2018.57.03.20
[8] doi: 10.1038/npp.2011.6
[9] doi: 10.1111/bph.13186
[10] DOI: 1002/cne.901240303
[11] https://doi.org/10.1124/jpet.117.244368
[12] https://doi.org/10.7812/TPP/18-041
[13] DOI: 10.1111/epi.14628
激しい運動は、スポーツ選手の健康にさまざまな面で影響することがわかっています。スポーツ選手が選手権で優勝する代償は、心理的なもの(不安感)であったり、習慣性のもの(睡眠パターン)であったり、肉体的なもの(怪我、骨の病気、神経損傷、筋肉痛、消化器疾患、感染症など)であったりします。CBDはこうした問題をすべて解決できる万能薬ではありませんが、CBDが身体の恒常性(ホメオスタシス)を維持する仕組みは、運動がもたらす悪影響の一部を緩和させるのに役立ちます。
CBDと骨
運動中に怪我をするのはよくあることです。一般に、運動は骨を健康に保つためには有益ですが、スポーツ選手は同時に、怪我をしやすく、エネルギーが枯渇することもたびたびあります。それによって骨の総合的な健康が損なわれ、神経損傷の原因ともなります。人間の骨に対するCBDの作用は未だ研究が行われていませんが、エンドカンナビノイド・システムの役割はある程度は研究されています。骨に発現しているカンナビノイド受容体CB1とCB2には、骨の恒常性を保つ役割があります[6]。動物に関する内因性カンナビノイドの研究では、CBDが骨折治癒を促進し、骨量の減少を防ぎ、骨折後に形成される仮骨を最小に保つ可能性があることを示しています。
スポーツによる末梢神経損傷は稀で、普通は怪我が原因です[7]。スポーツしているときの末梢神経の損傷は、圧力、ストレッチ、骨折などが原因で起こります。JA Prenderville et al(2015年)のレビュー論文[9]によれば、「実際にカンナビノイドは、成人の脳で起こるニューロン新生に関して、おそらくはCB1受容体とCB2受容体の活性化を通して明確な調節的役割を担って」います。1960年代までは、成人の脳には自己再生の能力がないものと広く考えられていましたが、この考え方は1965年、Altman と Das [10]の論文によって反証されました。その後、成人におけるニューロン新生の仕組みに関する理解には大きな進展が見られたものの、その過程はまだ完全には解明されておらず、仮説によれば、内因性カンナビノイドはニューロン新生のある段階で重要な役割を果たしている可能性があります[9]。またエンドカンナビノイド・システムは、海馬におけるニューロン新生に中心的な役割を果たすことがわかっています。
CBDと筋肉
エクササイズはまた、骨格筋に微細な損傷を与えることがあります。身体は損傷の起こった部位に自然に血液を送り込んで(炎症反応)、修復と再生を促進し、筋肉の痛みをやわらげます。CBDには抗炎症作用があることがわかっています[11]。炎症は筋肉の再生には欠かせません[4]が、筋肉痛を長引かせ、機能の回復を遅らせる原因にもなります。CBDの持つ抗炎症作用を歓迎するスポーツ選手の数は増えつつあり、彼らはCBD入りの軟膏、ローション、オイルなどの製品の効果を、疲労回復、疼痛緩和、炎症の軽減のために活用しています。
CBDと消化器系
筆者の個人的経験から言えば、CBDの作用の中でも最もわかりやすくまた即効性があるのは、吐き気と胃の痛みを抑える作用です[4]。持久力系のアスリートの30〜50%は、現役時代に何らかの消化器系の症状を経験しています[3]。吐き気、嘔吐、腹部アンギーナ、血便などを含むこうした症状は、通常は軽いもので、普段の栄養習慣、力学的な原因、水を飲むこと、内臓部から運動中の筋肉に向かって血液が流れることなどによって起こります。必ずしも選手のパフォーマンスに影響するわけではありませんが、スポーツ初心者や、これからジムに通ったりスポーツを始めようとしている人は、吐き気を感じればやる気を削がれますし、目標達成の邪魔になるかもしれません。
CBDの効果には2つの相があることがわかっています。高用量(一日あたり1,500ミリグラム以上)を摂取すると嘔吐を抑えることができます。ただし、英国食品基準局の忠告にしたがって一日70ミリグラムしか摂らなくても、吐き気や嘔吐を軽減させるのに効果があることが報告されています。CBDパッチは、長時間にわたって一定の量のCBDを放出します。CBDが持つ抗炎症作用・抗酸化作用と並んで、この摂取方法なら、激しい運動が引き起こす消化器系の症状から胃腸を護ることができるかもしれません。
CBDと疼痛
基礎研究で明らかになったCBDの効果の中でも最も有益なものの一つが、顕著な鎮痛作用[4]です。CBDが鎮痛作用を発揮するためにはおそらくいくつかの条件があって、治療量、痛みの種類、また摂取方法などが関係していることを理解するのが重要です。推奨最大使用量(英国食品基準局によれば一日あたり70ミリグラム)では、着実に痛みを緩和させることはできません。CBDに対する反応は選択的なもので、CBDが疼痛効果を発揮するのは、特定の抗がん剤による神経性の疼痛に対してのみであることを示すデータもあります。概して、動物モデルを使った実験では、CBDの外用薬を局所的に皮膚に塗布すると実際に鎮痛作用が認められます。
CBDと睡眠/精神面の健康
競技スポーツは通常、非常にストレスが高い環境の中で行われます。選手にどれほど才能があろうと、ストレスは、選手のパフォーマンスにも、また生活のあらゆる側面にも悪影響を与え、そこには睡眠も含まれています。眠りの質が悪ければ、人前で競技することに対する不安感が強まり、それが悪循環を引き起こします。CBDには、不安感をやわらげ、睡眠を改善する効果があることが示されています。
定期的なエクササイズは夜の安眠を助ける、と一般的に思われていますが、スポーツ選手は運動をしない人と比較して睡眠時間が平均1.2〜1.5時間短く、全体的に眠りの質も悪いという報告があります。一方、質の良い睡眠は、最大限の競技パフォーマンスを引き出し、疲労回復にかかる時間を最短にすることが証明されています。ある研究[12]では、不眠症の患者がCBDを使ったところ、睡眠時間もそのクオリティも改善されました。ですから、就寝前に温かい飲み物にCBDオイルを加えて飲めば、睡眠の質が改善される可能性があります。あるいは、競技前に不安を感じる選手は、競技の1時間前にCBDを摂ることで、不安症状をやわらげることができるかもしれません[8]。
CBD企業のアンバサダーになる著名スポーツ選手が増えています。CBDを使っているアスリートの中でも特に有名なのは、リッキー・ファウラー、エディ・ホール(別名ザ・ビースト)、マイク・タイソン、ミーガン・ラピノー、ジョージ・クルーズ、ネイト・ディアスなどでしょう。ランナー、武術家、パラリンピックの選手、スポーツ愛好家でCBDを愛用する人は増加の一途です。わたしたちは、まずはリサーチして、きちんと管理された信頼できる販売店、ブランド、製造企業の製品であることを確認してから購入するようお勧めします。
他に処方薬を摂っている人は、CBDを摂る前に必ず医師に相談しましょう。また妊娠中または授乳中の人はCBDを摂るのはやめましょう。
参照文献:
[1]. DOI: 10.1002/j.1552-4604.1981.tb02622.x (accessed 13/02/2021)
[2] Effects of sleep disturbance on functional and physiological outcomes in collegiate athletes: A scoping review – PubMed (nih.gov)
[3] https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/24791919/
[4] doi: 10.1186/s40798-020-00251-0
[5] doi: 10.1249/MSS.0b013e318265dd3d
[6] doi: 10.1007/s11914-020-00607-1
[7] doi: 10.20471/acc.2018.57.03.20
[8] doi: 10.1038/npp.2011.6
[9] doi: 10.1111/bph.13186
[10] DOI: 1002/cne.901240303
[11] https://doi.org/10.1124/jpet.117.244368
[12] https://doi.org/10.7812/TPP/18-041
[13] DOI: 10.1111/epi.14628


