大麻、ヘンプ、CBDをめぐる日本の状況
Green Zone Japan理事の三木直子が、日本における大麻とヘンプの文化的・法的な歴史について考察します。
日本における大麻の歴史は有史以前の時代まで遡るほど古く、縄文時代(紀元前1万年〜紀元前300年頃)の住居跡からは、麻から採れる繊維と種子が見つかっています。
歴史を通じて麻は広く栽培され、日本人の生活に重要な役割を果たしてきました。人々は麻から作った服を身に着け、麻で作った縄をさまざまな用途に使い、麻で紙を作り、種子を食べ、油を搾ってきたのです。修行中の忍者は日に日に成長する麻の上を飛び越えてジャンプ力を鍛えたと言われ、江戸時代の大名たちは経済の振興のために麻の栽培を奨励し、裕福な商人たちは高級な麻の着物を作りました。麻の畑は、かつては日本全国に豊かに広がっていたのです。
過去:非合法化以前
麻は日本の宗教においても聖なる植物として崇拝されていました。日本の土着信仰である神道では、麻は清浄さと豊穣の象徴とされ、さまざまな形でその儀式に使われてきました。神社には、そこが神聖な場所であることを示し悪い霊を追い払うために麻縄で作られた注連縄が飾られ、相撲の横綱は土俵入りの際、土俵を清めるための注連縄を腰に巻きます。仏教の習慣である盆会では、祖先の霊を迎えるために麻幹(麻の茎)を燃やします。
大麻草はまた、薬としても使われていました。薬局方にも収蔵され、喘息の治療、痛み止め、睡眠の改善その他の目的で使われていたのです。大麻チンキや大麻煙草は広く薬局で販売され、新聞に広告も掲載されていました。
これほど長く豊かな大麻草使用の歴史があるのですから、現在の日本は、大麻草をめぐる世界的な関心の高まりを喜んで受け入れていると思われるかもしれません。ところがそうではないのです。ここにご紹介したような麻の使い途のほとんどが、第二次世界大戦での敗戦とともに失われてしまいました。
マッカーサー元帥の指揮のもと、米国進駐軍は日本政府に、大麻草を非合法化するよう命じました。日本政府は困惑しました—当時の日本では、麻は最も重要な農作物の一つだったからです。麻栽培農家からの強い抗議に押された日本政府は、麻栽培農家を守るために進駐軍と交渉を重ねました。そうして1948年に制定された大麻取締法には次のように定められています:
第一章 総則
第一条 この法律で「大麻」とは、大麻草(カンナビス・サティバ・エル)及びその製品をいう。ただし、大麻草の成熟した茎及びその製品(樹脂を除く。)並びに大麻草の種子及びその製品を除く。
第四条 何人も次に掲げる行為をしてはならない。
一 大麻を輸入し、又は輸出すること(大麻研究者が、厚生労働大臣の許可を受けて、大麻を輸入し、又は輸出する場合を除く。)。
二 大麻から製造された医薬品を施用し、又は施用のため交付すること。
三 大麻から製造された医薬品の施用を受けること。
四 医事若しくは薬事又は自然科学に関する記事を掲載する医薬関係者等(医薬関係者又は自然科学に関する研究に従事する者をいう。以下この号において同じ。)向けの新聞又は雑誌により行う場合その他主として医薬関係者等を対象として行う場合のほか、大麻に関する広告を行うこと。
現在:政治的膠着状態
大麻およびヘンプに関して、日本は今も、72年前に制定されたこの法律に縛られたままです。
政府による厳しい規制のもと、麻の栽培は今現在も不可能ではありませんし、実際に行われています。でも栽培できるのは栽培ライセンスを持っている人だけですし、ライセンスの取得と維持には非常に面倒な手続きが必要です。また麻の繊維に代わる素材が台頭したこともあり、麻栽培農家の数は減少の一途を辿っており、1954年には37,313軒あった日本の麻栽培農家は、最も最近の調査(2016年)ではわずか37軒となっています。
残されたわずかばかりの麻栽培農家の一軒である徳島県の三木家(筆者とは親族関係にはありません)は、皇室のために麻を育て、加工し、麻布を織るという伝統を代々引き継いでいます。2019年11月15日には、徳仁天皇の即位に際した大嘗祭の一部として、「あらたえ」と呼ばれる麻の織物4巻が三木家によって天皇に奉納されました。他にも宗教儀式の一部として今でも麻が使われることがありますが、これは例外的なものです。
過去70年間にわたって日本政府が展開している反・大麻のプロパガンダは、徹底的かつ激しいものです。子どもの頃に麻畑を目にした記憶がある少数の人を除き、大麻草の実物に触れたことのある人はもちろん、見たことがある人さえ日本にはほとんどいません。ほぼすべての日本人にとって、大麻(食べると幻覚を見る、と日本人は教えられて育ちます)は生まれてからずっと、厳しく禁じられた麻薬なのです。厚生労働省は今でもマリファナを否定するメッセージを垂れ流し、大麻は若者をダメにする悪魔であると主張します。そう、日本は未だにリーファー・マッドネス時代のままなのです。
ほんの少数の栽培ライセンス保持農家と、さらに少数の研究者免許の持ち主を除き、日本では、医療利用や研究を含むどのような理由であっても大麻草の栽培・所持・配布は禁じられており、少ないときはわずか1グラムという少量を所持していただけでも逮捕されます。乾燥大麻を個人的に使うために5グラム以上所持していれば、最大5年の禁固刑に処せられます。
さらに厳しいのは、こうした「犯罪者」を見る世間の目です—芸能人が1,2グラムの大麻所持で逮捕されれば、芸能界での仕事は事実上なくなり、社会から抹殺されます。日本人にとって大麻所持は、罪ほろぼしのできない重大犯罪なのです。
医療大麻は一切入手できません。2015年にはステージ4の肝臓がんの患者が、自分で大麻を栽培した廉で逮捕され、「生き永らえるために」大麻を使用する権利を求めて裁判で闘いましたが、係争中に亡くなっています。
未来:ここからどこへ向かうのか?
日本政府は時代遅れの方針にしがみついたままですが、その一方で、インターネット経由で世界中から入ってくる、大麻に関する圧倒的な量の情報を無視することなど不可能です。
大麻草から得られるさまざまな恩恵を日本人が受けられるようになるためには、法律の見直しが必要なことは明らかです。けれども、政治家が私たちの声に耳を傾けてくれるためには、合法活動家が少しばかりいるだけでは足りません。医師が、自分の患者に大麻を使いたい、と思ってくれなくてはならないのです。
Green Zone Japan はそのために、2017年、医師である正高佑志と私とで設立した団体であり、日本人、とりわけ日本の医療従事者に向けて、医療大麻に関する科学的エビデンスにもとづいた最新情報を届けることを使命としています。日本人は医師の言うことを絶対的権威と考える傾向が強く、医師が医療大麻を否定すれば、患者が医療大麻を使える可能性はないに等しいからです。そこで私たちは、イーサン・ルッソ博士をシアトルから、エドワード・マー博士をデンバーから、ドナルド・エイブラムス博士をサンフランシスコからお招きし、日本の医療従事者にお話をしていただくなどの活動を展開してきました。このような著名な研究者の話を聞けば、日本の医師も、医療大麻には科学的な裏付けがあるのだということに気づいてくださるのではないかと思うからです。
ヘンプ由来のCBD市場の世界的な人気も私たちの活動にとっては追い風と言っていいでしょう。ヘンプ由来のCBD製品は、成熟した茎から作られ、THCが検出されない限り、健康補助食品として合法的に輸入が可能です。日本のCBD市場は成長しており、それによって、大勢の新しい消費者が医療大麻の世界に足を踏み入れ、医療大麻に関する認識が広がりつつあります。
大麻取締法に準じるために、現在日本で手に入るCBD製品の大多数はCBDアイソレートを使っており、ブロードスペクトラムの製品が若干あるだけです。THCは一切含むことが許されません。理想的とは言い難い状況ですが、何も手に入らないよりはマシです。事実私たちは、ヘンプ由来のCBD製品が、生後6か月の男の子のてんかん発作を完全に止めるのを目にしています。
このことがきっかけで起こった一連の動きが、素晴らしい可能性につながりました。2019年、厚生労働省が、難治性てんかんの治療薬としての大麻由来医薬品の臨床試験を許可する用意がある、と国会で正式に答弁したのです。続いて厚生労働省の出資により、聖マリアンナ医科大学の太組一朗教授を責任者とし、2021年3月末までに、試験薬の選定や治験プロトコルの設計をはじめどのように臨床試験を実施すべきかを提言するための、12名の研究者と補助メンバーから成る特別研究班が組織されました。Green Zone Japan もその一員として研究班に参加しています。臨床試験で良い結果が出れば、大麻取締法の改正に関する議論が否が応でも必要になります。そしてそれは大きな一歩です。
法律の改正を目指すと同時に、私たちはまた、より多くの人に医療大麻について関心を持ち、知ってもらわなくてはなりません。正確な情報と高品質な製品に触れることによって、医療大麻が持つ膨大な可能性について、もっと多くの人に気づいてもらわなくてはならないのです。
こうした教育啓蒙活動の一環として、Green Zone Japan は、カリフォルニア州に拠点を置く Project CBD の日本語ミラーサイトを作り、日本の皆さんにお届けしています。Project CBD は、CBDと医療大麻が持つ可能性を世界に知らしめるために中心的な役割を果たした非営利団体で、医療大麻という、より大きな文脈の中でCBDについて日本人が学ぶのにぴったりの情報源です。
Green Zone Japan はまた、難治性小児てんかんの子どもたちのために、「みどりのわ」というプログラムを運営しています。CBDをめぐる日本の問題の一つは、原料となるヘンプが国内で栽培できないために製品を輸入に頼らざるを得ず、CBD製品の小売価格が高額で、治療効果を発揮するに足る用量を継続的に使用するのが経済的に困難である、ということです。けれども、オルウェイズ・ピュア・オーガニックス社の寛大なご協力により、みどりのわでは、治療に必要な用量のCBD製品を低価格で提供することが可能です。みどりのわでは、患者の治療計画の妨げとならず、薬物相互作用の問題が起きないように、主治医の理解と了承のもとにこれを行っています。
みどりのわの運営が始まったのは比較的最近のことで、CBD製品を使い始めたばかりの患者が十数人いるだけですが、そのうちの少なくとも一人はすでに素晴らしい症状の改善があり、予定されていた脳の手術を回避することができました。医療大麻の効果を実際に体験した患者の数が増えることによって、医療大麻への関心が高まり、より多くの人が、医療大麻がより幅広く使えるようになることを要求して欲しい。それが私たちの願いです。
ゆっくりとではありますが確実に、変化は起きようとしています。
著者:三木直子
Green Zone Japan理事の三木直子が、日本における大麻とヘンプの文化的・法的な歴史について考察します。
日本における大麻の歴史は有史以前の時代まで遡るほど古く、縄文時代(紀元前1万年〜紀元前300年頃)の住居跡からは、麻から採れる繊維と種子が見つかっています。
歴史を通じて麻は広く栽培され、日本人の生活に重要な役割を果たしてきました。人々は麻から作った服を身に着け、麻で作った縄をさまざまな用途に使い、麻で紙を作り、種子を食べ、油を搾ってきたのです。修行中の忍者は日に日に成長する麻の上を飛び越えてジャンプ力を鍛えたと言われ、江戸時代の大名たちは経済の振興のために麻の栽培を奨励し、裕福な商人たちは高級な麻の着物を作りました。麻の畑は、かつては日本全国に豊かに広がっていたのです。
過去:非合法化以前
麻は日本の宗教においても聖なる植物として崇拝されていました。日本の土着信仰である神道では、麻は清浄さと豊穣の象徴とされ、さまざまな形でその儀式に使われてきました。神社には、そこが神聖な場所であることを示し悪い霊を追い払うために麻縄で作られた注連縄が飾られ、相撲の横綱は土俵入りの際、土俵を清めるための注連縄を腰に巻きます。仏教の習慣である盆会では、祖先の霊を迎えるために麻幹(麻の茎)を燃やします。
大麻草はまた、薬としても使われていました。薬局方にも収蔵され、喘息の治療、痛み止め、睡眠の改善その他の目的で使われていたのです。大麻チンキや大麻煙草は広く薬局で販売され、新聞に広告も掲載されていました。
これほど長く豊かな大麻草使用の歴史があるのですから、現在の日本は、大麻草をめぐる世界的な関心の高まりを喜んで受け入れていると思われるかもしれません。ところがそうではないのです。ここにご紹介したような麻の使い途のほとんどが、第二次世界大戦での敗戦とともに失われてしまいました。
マッカーサー元帥の指揮のもと、米国進駐軍は日本政府に、大麻草を非合法化するよう命じました。日本政府は困惑しました—当時の日本では、麻は最も重要な農作物の一つだったからです。麻栽培農家からの強い抗議に押された日本政府は、麻栽培農家を守るために進駐軍と交渉を重ねました。そうして1948年に制定された大麻取締法には次のように定められています:
第一章 総則
第一条 この法律で「大麻」とは、大麻草(カンナビス・サティバ・エル)及びその製品をいう。ただし、大麻草の成熟した茎及びその製品(樹脂を除く。)並びに大麻草の種子及びその製品を除く。
第四条 何人も次に掲げる行為をしてはならない。
一 大麻を輸入し、又は輸出すること(大麻研究者が、厚生労働大臣の許可を受けて、大麻を輸入し、又は輸出する場合を除く。)。
二 大麻から製造された医薬品を施用し、又は施用のため交付すること。
三 大麻から製造された医薬品の施用を受けること。
四 医事若しくは薬事又は自然科学に関する記事を掲載する医薬関係者等(医薬関係者又は自然科学に関する研究に従事する者をいう。以下この号において同じ。)向けの新聞又は雑誌により行う場合その他主として医薬関係者等を対象として行う場合のほか、大麻に関する広告を行うこと。
現在:政治的膠着状態
大麻およびヘンプに関して、日本は今も、72年前に制定されたこの法律に縛られたままです。
政府による厳しい規制のもと、麻の栽培は今現在も不可能ではありませんし、実際に行われています。でも栽培できるのは栽培ライセンスを持っている人だけですし、ライセンスの取得と維持には非常に面倒な手続きが必要です。また麻の繊維に代わる素材が台頭したこともあり、麻栽培農家の数は減少の一途を辿っており、1954年には37,313軒あった日本の麻栽培農家は、最も最近の調査(2016年)ではわずか37軒となっています。
残されたわずかばかりの麻栽培農家の一軒である徳島県の三木家(筆者とは親族関係にはありません)は、皇室のために麻を育て、加工し、麻布を織るという伝統を代々引き継いでいます。2019年11月15日には、徳仁天皇の即位に際した大嘗祭の一部として、「あらたえ」と呼ばれる麻の織物4巻が三木家によって天皇に奉納されました。他にも宗教儀式の一部として今でも麻が使われることがありますが、これは例外的なものです。
過去70年間にわたって日本政府が展開している反・大麻のプロパガンダは、徹底的かつ激しいものです。子どもの頃に麻畑を目にした記憶がある少数の人を除き、大麻草の実物に触れたことのある人はもちろん、見たことがある人さえ日本にはほとんどいません。ほぼすべての日本人にとって、大麻(食べると幻覚を見る、と日本人は教えられて育ちます)は生まれてからずっと、厳しく禁じられた麻薬なのです。厚生労働省は今でもマリファナを否定するメッセージを垂れ流し、大麻は若者をダメにする悪魔であると主張します。そう、日本は未だにリーファー・マッドネス時代のままなのです。
ほんの少数の栽培ライセンス保持農家と、さらに少数の研究者免許の持ち主を除き、日本では、医療利用や研究を含むどのような理由であっても大麻草の栽培・所持・配布は禁じられており、少ないときはわずか1グラムという少量を所持していただけでも逮捕されます。乾燥大麻を個人的に使うために5グラム以上所持していれば、最大5年の禁固刑に処せられます。
さらに厳しいのは、こうした「犯罪者」を見る世間の目です—芸能人が1,2グラムの大麻所持で逮捕されれば、芸能界での仕事は事実上なくなり、社会から抹殺されます。日本人にとって大麻所持は、罪ほろぼしのできない重大犯罪なのです。
医療大麻は一切入手できません。2015年にはステージ4の肝臓がんの患者が、自分で大麻を栽培した廉で逮捕され、「生き永らえるために」大麻を使用する権利を求めて裁判で闘いましたが、係争中に亡くなっています。
未来:ここからどこへ向かうのか?
日本政府は時代遅れの方針にしがみついたままですが、その一方で、インターネット経由で世界中から入ってくる、大麻に関する圧倒的な量の情報を無視することなど不可能です。
大麻草から得られるさまざまな恩恵を日本人が受けられるようになるためには、法律の見直しが必要なことは明らかです。けれども、政治家が私たちの声に耳を傾けてくれるためには、合法活動家が少しばかりいるだけでは足りません。医師が、自分の患者に大麻を使いたい、と思ってくれなくてはならないのです。
Green Zone Japan はそのために、2017年、医師である正高佑志と私とで設立した団体であり、日本人、とりわけ日本の医療従事者に向けて、医療大麻に関する科学的エビデンスにもとづいた最新情報を届けることを使命としています。日本人は医師の言うことを絶対的権威と考える傾向が強く、医師が医療大麻を否定すれば、患者が医療大麻を使える可能性はないに等しいからです。そこで私たちは、イーサン・ルッソ博士をシアトルから、エドワード・マー博士をデンバーから、ドナルド・エイブラムス博士をサンフランシスコからお招きし、日本の医療従事者にお話をしていただくなどの活動を展開してきました。このような著名な研究者の話を聞けば、日本の医師も、医療大麻には科学的な裏付けがあるのだということに気づいてくださるのではないかと思うからです。
ヘンプ由来のCBD市場の世界的な人気も私たちの活動にとっては追い風と言っていいでしょう。ヘンプ由来のCBD製品は、成熟した茎から作られ、THCが検出されない限り、健康補助食品として合法的に輸入が可能です。日本のCBD市場は成長しており、それによって、大勢の新しい消費者が医療大麻の世界に足を踏み入れ、医療大麻に関する認識が広がりつつあります。
大麻取締法に準じるために、現在日本で手に入るCBD製品の大多数はCBDアイソレートを使っており、ブロードスペクトラムの製品が若干あるだけです。THCは一切含むことが許されません。理想的とは言い難い状況ですが、何も手に入らないよりはマシです。事実私たちは、ヘンプ由来のCBD製品が、生後6か月の男の子のてんかん発作を完全に止めるのを目にしています。
このことがきっかけで起こった一連の動きが、素晴らしい可能性につながりました。2019年、厚生労働省が、難治性てんかんの治療薬としての大麻由来医薬品の臨床試験を許可する用意がある、と国会で正式に答弁したのです。続いて厚生労働省の出資により、聖マリアンナ医科大学の太組一朗教授を責任者とし、2021年3月末までに、試験薬の選定や治験プロトコルの設計をはじめどのように臨床試験を実施すべきかを提言するための、12名の研究者と補助メンバーから成る特別研究班が組織されました。Green Zone Japan もその一員として研究班に参加しています。臨床試験で良い結果が出れば、大麻取締法の改正に関する議論が否が応でも必要になります。そしてそれは大きな一歩です。
法律の改正を目指すと同時に、私たちはまた、より多くの人に医療大麻について関心を持ち、知ってもらわなくてはなりません。正確な情報と高品質な製品に触れることによって、医療大麻が持つ膨大な可能性について、もっと多くの人に気づいてもらわなくてはならないのです。
こうした教育啓蒙活動の一環として、Green Zone Japan は、カリフォルニア州に拠点を置く Project CBD の日本語ミラーサイトを作り、日本の皆さんにお届けしています。Project CBD は、CBDと医療大麻が持つ可能性を世界に知らしめるために中心的な役割を果たした非営利団体で、医療大麻という、より大きな文脈の中でCBDについて日本人が学ぶのにぴったりの情報源です。
Green Zone Japan はまた、難治性小児てんかんの子どもたちのために、「みどりのわ」というプログラムを運営しています。CBDをめぐる日本の問題の一つは、原料となるヘンプが国内で栽培できないために製品を輸入に頼らざるを得ず、CBD製品の小売価格が高額で、治療効果を発揮するに足る用量を継続的に使用するのが経済的に困難である、ということです。けれども、オルウェイズ・ピュア・オーガニックス社の寛大なご協力により、みどりのわでは、治療に必要な用量のCBD製品を低価格で提供することが可能です。みどりのわでは、患者の治療計画の妨げとならず、薬物相互作用の問題が起きないように、主治医の理解と了承のもとにこれを行っています。
みどりのわの運営が始まったのは比較的最近のことで、CBD製品を使い始めたばかりの患者が十数人いるだけですが、そのうちの少なくとも一人はすでに素晴らしい症状の改善があり、予定されていた脳の手術を回避することができました。医療大麻の効果を実際に体験した患者の数が増えることによって、医療大麻への関心が高まり、より多くの人が、医療大麻がより幅広く使えるようになることを要求して欲しい。それが私たちの願いです。
ゆっくりとではありますが確実に、変化は起きようとしています。
著者:三木直子


