CBDが身体に与える影響
前回のブログ記事では、エンドカンナビノイド・システム(ECS)がどのように機能するかについて簡単に触れましたが、その内容はきちんと覚えていただけましたでしょうか?なぜなら今回の記事は、その理解が前提としてかなり重要だからです。この記事ではいくつかのトピックを取り上げますので、若干行ったり来たりするかもしれません。具体的には、CBDとTHCが、それぞれの受容体とのどのように結合してどのように作用し、それが他の信号伝達システムにどのように影響するかについて見ていきたいと思います。前回の記事と同じく、かなり内容の濃い記事になると思います。ご健闘を祈ります。
このところ、CBDに対する関心が爆発的に高まっていますが、CBDに関しては驚くほどの知識がかなり前から存在しています。古くは1940年代から詳細な研究が行われてきており、CBDの分子構造と化学的機能が明らかにされました(Pertwee, 2006年)。その後新たに発見されたエンドカンナビノイド・システム(ECS)についての知見が増すのと同時に、さまざまなカンナビノイドの薬理作用を調べるための実験も間もなく始まりました。ECSには、さまざまな植物性カンナビノイドが結合できる受容体が2つあり、CB1およびCB2と呼ばれています。CB1受容体は主に中枢神経系にあり、CB2受容体は主に免疫細胞にあります。このようにカンナビノイドが作用するポイントが広く分布していることが、CBDが幅広い疾患に効果を発揮する理由です。
CBDには、もう一つの主要なカンナビノイドであるTHCと非常に異なった効果があります。その理由は、2種類のカンナビノイド受容体との結合の仕方がTHCとは異なるからです。受容体タンパク質と結合し、その細胞に反応を起こさせる分子のことを作動薬(アゴニスト)と呼ぶのに対し、その反応を阻害する分子を拮抗薬(アンタゴニスト)と呼びます。シンプルでわかりやすいものから説明しますと、THCはCB1受容体とCB2受容体の部分作動薬です—つまり、受容体に結合はしますが、特別にその受容体に結合するために設計された分子ほどは効率が良くないのです。たとえば、アナンダミド(前回のブログ記事でお話ししました)は体内で、特にカンナビノイド受容体に結合するために産生されますので、THCよりも効率良く結合します。THCとアナンダミドは作動薬として細胞に反応を起こさせます。それがその効果の仕組みです。
分子と受容体の結合の仕方には色々なタイプがあり、それによって異なった反応が起きること、またTHCが作動薬である、という事実から、CBDはTHCとは逆で拮抗薬である、と推測するのは理に適っているように思えます。でも残念ながら、それほど単純ではないのです。CBDは、どちらのカンナビノイド受容体とも結合能は非常に低く、実は、他の受容体作動薬の働きを阻害します。これをわかりやすく説明するために、身体が起こす反応を棒グラフだと考えてみてください。作動薬が受容体に結合すると、より大きな反応が起きるので棒グラフが伸びます。ところがCBDは、結合する作動薬の作用を阻害して作動薬による反応が起きるのを防ぎ、したがって棒グラフは元通りの長さに近くなります。このことは、CBDの身体に対する働きに表れています—不安、疼痛、炎症などの症状をやわらげるのがその典型です。また、CBDによる効果は受容体との結合と全く無縁であることもあります。
分子と受容体の結合の仕方には色々なタイプがあり、それによって異なった反応が起きること、またTHCが作動薬である、という事実から、CBDはTHCとは逆で拮抗薬である、と推測するのは理に適っているように思えます。
最後にお話ししたいのは、CBDは結合する相手を選ばない、ということです。もちろん、CBDが持つ効果の多くはエンドカンナビノイド・システムに作用することによるもので、CBDはカンナビノイドなのですからそれは当然です。でも、CBDが人体内のそれ以外の信号伝達システムに作用するというエビデンスもあるのです。例えばその一例がセロトニン神経系です。幸福感をもたらす作用が最も有名ですが、セロトニンの信号伝達による効果は、認知、記憶、そして数々の生理過程を含め、非常に多岐にわたります。物事をさらに複雑にしているのがルッソ博士らによる発見(Russo et al., 2005年)で、CBDがセロトニン神経系に作用する場合、CBDはセロトニン神経系の一部である5HT1A受容体の作動薬の働きをするのです。
ここまで読んでくださったあなた—おめでとうございます! 細胞シグナル伝達は複雑なトピックで、色々な作用機序と用語を理解しなくてはなりません。植物性カンナビノイドは、作用する信号伝達システムによって異なった働き方をするので理解するのがますます困難です。少なくともあなたが、エンドカンナビノイド・システムとそれ以外の信号伝達システムについて、カンナビノイドとの結合がどのように起きるのか、それがカンナビノイドの作用にどう影響するのかをご理解いただけたことを願います。
【参考文献】
Pertwee (2006) – https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC1760722/
Russo et al. (2005) – https://link.springer.com/article/10.1007%2Fs11064-005-6978-1
前回のブログ記事では、エンドカンナビノイド・システム(ECS)がどのように機能するかについて簡単に触れましたが、その内容はきちんと覚えていただけましたでしょうか?なぜなら今回の記事は、その理解が前提としてかなり重要だからです。この記事ではいくつかのトピックを取り上げますので、若干行ったり来たりするかもしれません。具体的には、CBDとTHCが、それぞれの受容体とのどのように結合してどのように作用し、それが他の信号伝達システムにどのように影響するかについて見ていきたいと思います。前回の記事と同じく、かなり内容の濃い記事になると思います。ご健闘を祈ります。
このところ、CBDに対する関心が爆発的に高まっていますが、CBDに関しては驚くほどの知識がかなり前から存在しています。古くは1940年代から詳細な研究が行われてきており、CBDの分子構造と化学的機能が明らかにされました(Pertwee, 2006年)。その後新たに発見されたエンドカンナビノイド・システム(ECS)についての知見が増すのと同時に、さまざまなカンナビノイドの薬理作用を調べるための実験も間もなく始まりました。ECSには、さまざまな植物性カンナビノイドが結合できる受容体が2つあり、CB1およびCB2と呼ばれています。CB1受容体は主に中枢神経系にあり、CB2受容体は主に免疫細胞にあります。このようにカンナビノイドが作用するポイントが広く分布していることが、CBDが幅広い疾患に効果を発揮する理由です。
CBDには、もう一つの主要なカンナビノイドであるTHCと非常に異なった効果があります。その理由は、2種類のカンナビノイド受容体との結合の仕方がTHCとは異なるからです。受容体タンパク質と結合し、その細胞に反応を起こさせる分子のことを作動薬(アゴニスト)と呼ぶのに対し、その反応を阻害する分子を拮抗薬(アンタゴニスト)と呼びます。シンプルでわかりやすいものから説明しますと、THCはCB1受容体とCB2受容体の部分作動薬です—つまり、受容体に結合はしますが、特別にその受容体に結合するために設計された分子ほどは効率が良くないのです。たとえば、アナンダミド(前回のブログ記事でお話ししました)は体内で、特にカンナビノイド受容体に結合するために産生されますので、THCよりも効率良く結合します。THCとアナンダミドは作動薬として細胞に反応を起こさせます。それがその効果の仕組みです。
分子と受容体の結合の仕方には色々なタイプがあり、それによって異なった反応が起きること、またTHCが作動薬である、という事実から、CBDはTHCとは逆で拮抗薬である、と推測するのは理に適っているように思えます。でも残念ながら、それほど単純ではないのです。CBDは、どちらのカンナビノイド受容体とも結合能は非常に低く、実は、他の受容体作動薬の働きを阻害します。これをわかりやすく説明するために、身体が起こす反応を棒グラフだと考えてみてください。作動薬が受容体に結合すると、より大きな反応が起きるので棒グラフが伸びます。ところがCBDは、結合する作動薬の作用を阻害して作動薬による反応が起きるのを防ぎ、したがって棒グラフは元通りの長さに近くなります。このことは、CBDの身体に対する働きに表れています—不安、疼痛、炎症などの症状をやわらげるのがその典型です。また、CBDによる効果は受容体との結合と全く無縁であることもあります。
分子と受容体の結合の仕方には色々なタイプがあり、それによって異なった反応が起きること、またTHCが作動薬である、という事実から、CBDはTHCとは逆で拮抗薬である、と推測するのは理に適っているように思えます。
最後にお話ししたいのは、CBDは結合する相手を選ばない、ということです。もちろん、CBDが持つ効果の多くはエンドカンナビノイド・システムに作用することによるもので、CBDはカンナビノイドなのですからそれは当然です。でも、CBDが人体内のそれ以外の信号伝達システムに作用するというエビデンスもあるのです。例えばその一例がセロトニン神経系です。幸福感をもたらす作用が最も有名ですが、セロトニンの信号伝達による効果は、認知、記憶、そして数々の生理過程を含め、非常に多岐にわたります。物事をさらに複雑にしているのがルッソ博士らによる発見(Russo et al., 2005年)で、CBDがセロトニン神経系に作用する場合、CBDはセロトニン神経系の一部である5HT1A受容体の作動薬の働きをするのです。
ここまで読んでくださったあなた—おめでとうございます! 細胞シグナル伝達は複雑なトピックで、色々な作用機序と用語を理解しなくてはなりません。植物性カンナビノイドは、作用する信号伝達システムによって異なった働き方をするので理解するのがますます困難です。少なくともあなたが、エンドカンナビノイド・システムとそれ以外の信号伝達システムについて、カンナビノイドとの結合がどのように起きるのか、それがカンナビノイドの作用にどう影響するのかをご理解いただけたことを願います。
【参考文献】
Pertwee (2006) – https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC1760722/
Russo et al. (2005) – https://link.springer.com/article/10.1007%2Fs11064-005-6978-1


